久々に渋谷に行った。
本当に久しぶりだ。
そもそも私は渋谷の喧騒があまり好きではない。
高校生の頃はよく行っていたが、ヘッドホンをして「この世界の外は全てノイズ」という顔をしながら歩いていた。
15年ほど前は通勤で乗り換えに使っていた事もあったが、改札を出るためのノロノロ進む行列を眺めながら「私もこの人たちもみんなゾンビみたいだな」とぼんやり思っていた。
他人をゾンビ扱いして失礼極まりない奴である。
そんな渋谷と私の関係だが、ヒカリエなどの商業施設が立ち並ぶ頃には足を運ぶ機会もほとんど無くなっていた。
先に述べたように渋谷自体あまり好きではなかったし、なんなら「渋谷乗り換えを避けるルート」をわざわざ編み出していたくらいだ。
山手線はもう何年も乗っていない。
ロフトに行くついでにパルコのオタクフロアを覗くか覗かないか…のために、年に一度渋谷に行くか行かないか、といった感じである。
で、そんな渋谷になぜ行く事になったのか。
サクラステージという商業施設のとあるポップアップストアに興味があったからだ。
ヒカリエですらいまだに新しい施設だと思っているのに、いつしか知らない商業施設だらけになった。
行き方を調べてみたがややこしい。まるでダンジョンだ。
今の渋谷は、新宿なんかよりよほどダンジョンしているのではないだろうか。
いや、新宿は単に一時期働いていたから慣れていただけだろう。あそこも大概ダンジョンだ。
(新宿もここ数年行ってないな)
渋谷の事はもともとよく知っていたはずなのに、ヒカリエ周辺は未知が溢れていた。
行き方を調べながら歩いていたはずなのに、全く別の方向に行こうとして引き返したりもした。
きょろきょろ、うろうろ。
いくつかの商業施設を通り抜け、ようやく目当ての場所に辿り着いた。
到着した事で軽く達成感を覚えたほどだ。
道中でセンタースクエア、ヒカリエ、渋谷ストリームの脇を通り抜けた。
これらの施設を通り抜けながら「この街は最適化されたのだな」と思った。
再開発。高層ビル。デジタルサイネージ。
綺麗かつ便利になっていく。
どの街も似たような感じに最適化されていく。
まるで、汚れを一律に落として漂白していくような。
それが良い事なのか悪い事なのかよくわからない。
どちらも正しいし、どちらも違う気がする。
白黒つかない事柄なのだろう。
とにかく、私はずっと浦島太郎のような気分で歩いていた。
目当てのポップアップストアを楽しみ、真逆の方向にあるヴィレヴァンにも久々に行った。
こちらは数年前と変わらない佇まいだった。
薄汚れたエスカレーター、階段、相変わらずだ。
どことない安心感があった。
きっとピカピカの街を探せば、その片隅にはまだまだ昔ながらの何かは残っているのだろう。
一つことわっておくが、私は別に懐古主義者というわけでもない。
薄汚れた街並みは正直あまり好きではなかった。
センター街を通るたびに「下水くせぇ」と不快な気分になっていたくらいだ。
だったらヒカリエ周辺の綺麗な通路の方がよっぽど歩きやすい。
昔を懐かしみつつも、今の最適化も好む。
結局どっちつかずなのだろう、私は。
