凡シュール

レインボーブリッジを歩きながら

凡シュールのエッセイ

昨日は出かける日と決めていた。
どこに出かけるか悩んだが、有明ガーデンのでかい無印良品でこの前買い損ねたウールフェルトのヤクを買おうと考えた。
その後、長年乗りたいと思っていた水上バスで浅草、スカイツリーに向かってみるのも良さそうだなと。

水上バスの時間はかなり限られているので、間に合うか間に合わないかは微妙なところだった。ギリギリ。
まあいい、とりあえず行ってみよう。

有明ガーデンから浅草行きの水上バスが出ているお台場海浜公園までは、徒歩約30分
真面目に間に合わせるためには、ゆりかもめレンタサイクルを使うところだ。
が、別に間に合わないなら間に合わないでいいなと思った。だから歩いた。
ひらけて閑散とした大通り、海に架かる橋の上を歩くのは気持ちいい。

水上バス乗り場に辿り着いたのは、出航3分前。ギリギリ。
とはいえ、チケット売り場らしき場所は閉まっていた。
ネット予約オンリーなのだろうか。
しかしネット予約は出航5分前まで予約が出来ます、との事だった。

だめじゃん。

仕方ないので別プラン。
その名も「レインボーブリッジを歩こう」計画だ。
レインボーブリッジに遊歩道があり、そこを歩く事が出来るのを知ったのは数年前だ。
それ以来「いつか歩きたい」と思いつつ、なかなか機会が無かった。

お台場海浜公園の脇を抜けて、遊歩道の入り口へ。
ひたすら歩く。

周りに人もほとんどおらず、世界に存在する人間が私一人だけになった感覚。
脇をたくさんの車が走っていたが、その車もいつの間にか自動運転になっていて人がいなくなって…。
そうなったら少し面白いかもしれないと思った。
そういう小説を書いてみてもいいのかもしれない。

時折風景動画を撮影していたが、まあ揺れる
車が通るたびに橋がガタガタガタと揺れるので、何度か落ちるような感覚を味わったほどだ。
そういう意味ではあまり快適とは言えなかった。

それでも、ただただ大きい橋を歩くというのは楽しかった。
ここでは私を知っている人間など誰もおらず、何者でもない。
自由とはこういうものなのかもしれない。非日常感。
そんな解放感がある。だから馴染みのない場所を散歩するのは好きだ。一人旅に近い。

遊歩道の終点に到達し、芝浦に辿り着いた。
このまま芝浦埠頭から船に乗り、伊豆諸島でも小笠原諸島でも行きたい衝動に駆られたが、理性により即座に撤回された。
今日は夕飯を作ると決めたんだ。

その後は海岸通り沿いに出てぶらぶら歩いた。
浜松町と羽田空港を繋ぐ東京モノレール沿いの道である。
このあたりも港区だ。高そうなタワマンが立ち並んでいる。
とはいえ近くは倉庫、首都高羽田線の高架があるから全体的に薄暗く、あまり開放感のある感じではない。
住み心地は正直微妙そうである。

港区といえば六本木や青山の煌びやかなイメージだが、そういったイメージとはかけ離れている。
そんな場所でも一応港区ではあるし、品川駅から徒歩15分くらいなので人気はありそうだなと思った。
同じ港区でもこれだけ印象が違う。東京という都市の多様性を垣間見た気がした。

不動産情報に思いを馳せるのが好きである。
なんでかな。人が集まる理由を見出したいし、この土地でどんな人がどのような生活を送っているのかに興味があるからかもしれない。

こんな場所を歩くのは、周辺住民か周辺に勤めている人間しかいないだろう。
何の用事も無いのに、全く馴染みのない土地を練り歩いている。
異物感。その異物になっているという自覚が妙に快感である。

実は世の中の変質者みたいな人たちも似たような感覚を味わいたくて、そういう事をしているのかもしれない。
別に変質者の気持ちが分かりたいわけではないのだが。

本来、この場所を歩く理由は何もない。
ただ私が歩きたいと思ったから歩いている。それだけだ。
感性の赴くままに。
そんな事を考えながら歩いていたら、2万歩以上歩いていた。

帰宅してから夕飯を作る。
が、主菜に入れるはずの刻んだねぎとニンニクを間違えて副菜のフライパンに放り込んでしまった。
そのせいで副菜の小松菜のおひたしがやけにガーリックな味わいになってしまった。油そばの具みたいな味だ。だが小松菜。うーむ。

風呂を沸かそうとしたら給湯器の自動ふろ機能が唐突にぶっ壊れた。
なんでやねん。
お湯自体は出るのだが、自動でふろを沸かそうとすると止まる。エラーの番号も表示されていて、どうやら故障らしい。

なんだか微妙についていない。
思えば水上バスがギリギリ間に合わなかったのも、そもそも有明ガーデンに向かう際の電車が4分くらい遅延していたからという理由もある。
それが無かったら間に合っていたかもしれない。

とはいえ、水上バスに乗れていたらレインボーブリッジを歩く事は出来なかった。
やはり幸不幸というものは表裏一体なのだろう。
幸福かどうかなど、結局は外部が決めるものではなく主観的なものに過ぎない。

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