凡シュール

ランダム商法にハマる心理と問題点

凡シュールのエッセイ

昨日、某ブラインドボックスの商品(全4種)を3つ買ったら全て同じものだった。
その前日には別の店舗で4つ買っていたが、4つとも全て同じものが出ていた。

さすがに開封して「は?」という声が出た。

7つも買って全て同じなのはさすがに異常ではないだろうか?
1ロットに全4種入ってる前提で、2店舗で購入した7個全てが同じ種類になる確率は?

1ロットが12個か16個か忘れてしまったので、両方の条件でAIに計算させてみた。
勿論全4種が均等に含まれていると仮定している。

が、そもそも12個ロットだった場合はありえない事態である。
なぜなら1ロット内全種均等にある場合、同種は3つまでしか存在しえない。
同種4つ出る事自体ありえないからである。
16個ロットの場合でも約6万分の1という確率になった。

1店舗目では1ロットの箱から開けたばかりの状態、2店舗目では数個売れてた状態だったので数値は多少変動するだろうが、それでもかなりの低確率なのは変わらないだろう。

ただ、この確率計算は「1ロット内に全種が均等に配置されている事」前提である。
つまり16個1ロットなら全4種が4個ずつ、12個1ロットなら全4種が3個ずつランダムで封入されているという前提がある。

もしこの前提が守られていないかつ、その事実を伏せていた場合、優良誤認とも取られかねないと思う。

冒頭から算数の話みたいになってしまったが、昨日はここから果てしない思考の旅が始まってしまった。
まず浮かんだ疑問は「これは問い合わせ案件なのか?それとも私が極端に運が悪いだけなのか?」である。

この疑問によって上記の確率計算を始めたわけだが、6万分の1なら不運では片付けられないだろう。

というわけでこの件はメーカーに問い合わせ済みである。

4個だったら不運で片付けられるかもしれないけど、別店舗で購入したとはいえ7個はさすがにロット不備を疑ってもいいだろう。
回答待ちである。きっと週明け以降になるだろう。

ちなみに問い合わせ時は感情をほぼ廃し、ごく普通に淡々と問い合わせた。
「⚪︎⚪︎店で4個、△△店で3個、計7個買ったんですが全て同じものでした。ロットの不備の可能性もあるので問い合わせさせていただきました。可能であれば返金や交換ではなく、残り3種を3個分の値段で購入したいです」といった内容だ。
実際の文章はもっと丁寧に書いたが。

こういう問い合わせは感情的になったところでただのクレーマー扱いされるのがオチである。
事実と要望を淡々とありのままに問い合わせる。
クレームではなくフィードバックだ。

ここからが本題だ。

そもそも私はランダム商法というものがあまり好きではない。
いつからかソシャゲのガチャは意図的に課金を避けるようになり、オタクグッズもほとんど買わなくなった。
ブラインド販売の時点で相当欲しい物以外は避けている。

だが、最近ランダム商法が様々な業界に波及している気がする。
最近ガチャガチャショップがやたら増えたとは思わないだろうか。

ガチャガチャは古くからあるランダム商法の一種である。

私はガチャガチャショップを見るのは好きだが、コンプリートを目指す場合、特定のものが欲しい場合はなるべくその場では回さない。
まず楽天で検索してコンプリートセットを探す。

卸売業者が販売している事が多いのでそれを買う。
例えば500円全4種のガチャガチャがあったとする。

普通にガチャガチャを回したら2000円でコンプリート出来る。
が、これは1度も被らなかった場合である。

よほど運が良くない場合はもっと回す事になるだろう。
私は以前全6種だかのガチャガチャをコンプリートしようとして最後の1つがやたら出ず、最終的に30回ほど回す羽目になった事がある。

で、卸売業者のコンプリートセットは大抵2500円+送料とかで販売されている。
500円ほど上乗せされて割高感があるが、卸売業者の手数料と考えれば納得の値段だろう。

少なくともコンプリートしたいのに全く揃わないストレス、あと何度回せば揃うのかという不安におかされず安心して欲しいものを買える。
それだけで、この500円と送料は払う価値があると考える。

そもそも仮に被りまくって10回回す羽目になった場合、5000円かかる事になる。
しかもその10回を回す間は楽しさよりもストレスマッハだろう。

ここで1つ疑問文。
金を払って不幸になってるのはどういう事なのだろうか?

被った。また被り。またかよ…。
ランダム商法のものやガチャを購入した事があるなら誰もが陥った事のある状況。
こうなると金をつぎ込めばつぎ込むほど溜息が重なり、最終的に目当てのものが出たとしても喜びよりは徒労感が勝るものである。

さて、ここまで書いてみたがそろそろ正論パンチが飛んでくる頃だろう。
「そもそも自己責任じゃん。どうして金額を決めて回すとか出来ないの?」

では、例えば5000円という予算をもってガチャガチャを回すと仮定する。
5000円分回した時点で目当ての物は出ていない。

この時にあなたは撤退する勇気があるだろうか?

勇気があるのならそれは結構。
あなたは特別意志が強い人である。
その意志の強さを誇って生きてほしい。

ではこの状態で撤退するか否かの2択を突き付けられた場合、人はどう考えるか?

5000円も使って目当ての物が出なかった…
つまり回した本人にとっては欲しくもない物を5000円かけて買ったに等しい。

金ドブ。金をドブに捨ててるのに等しい。

今撤退すれば虚無だが…
ここで悪魔がこう囁く。
もう1回回せば出るかもしれない

撤退してしまっては、もう意中の物を手に入れる事は出来ない。
が、回せば次こそ出る可能性は無くもないのではないか?
むしろこれだけ金を使ったんだからそろそろ出てきてもいい頃だろう?
報われてもいいだろう?

そもそも意中の物が欲しいからこそ、これだけストレスと金を賭けて回したはずだ。
それも推しへの愛ゆえ。愛は理性を凌駕するものである。

そういう心理で「あと1回」を積み重ねていく。
「もうヤバい」と思いつつ止める事は出来ない。
後には引けなくなっている。サンクコスト

ようやく出た時には予算を大幅オーバー。
これでは素直に喜ぶ事も出来ないだろう。
なんなら喜びも束の間「やってしまった…」という気持ちの方が勝るかもしれない。

これは例え話に過ぎないが、一般的な「あるある」話だろう。
これを「自己管理がなっていない」と捉えるか「邪悪な商法だな」と捉えるかは自由だ。

「ここまで身を削ったからこそ推しを愛している」というアピールが、SNSでの大量買い報告なのではないかと思う。
消費者の純粋な感情を利用して射幸心を煽り、搾取して利益を得るのがランダム商法の構造である。
悪魔的だ。

さて、そろそろ販売側の「こっちだってやりたいわけじゃないけど仕方ないんだよ…」という声が聞こえてきそうだ。
実際そんな販売サイドの人が書いた文章をネットで見た。
これは「お前らが売るからだ」「お前らが買うからだ」の水掛け論にしかならない。

ここでまた例え話。
ブラインドボックスの商品があったとする。
この商品はA〜Eのキャラクターが入っていて、全5種。

Aは人気キャラで、BはAに比べて人気が劣るキャラだとする。
このAとBを同じ商品に含めることで、実質Aのファン達がBにもお金を落とす事になる。

これがブラインド商品ではなくなった場合、Aがたくさん売れてBは売れ残ったりする可能性が高い。
そうなると、販売サイドとしてはBの商品は利益が出ない…
つまり販売するメリットが無くなる

A関連の新グッズが20個発売される間に、Bのグッズは1個出るか出ないか…といった感じになるだろう。

このように、ランダム商法とは販売サイドからしたら多大なメリットがある売り方であると言える。
これが売る側の免罪符になっている側面もある。
だからこそいくら文句を言われようと辞める事が出来ない…というのが現状だ。

あとランダム商法は悪質だと思う反面、何が出るか分からないワクワク感というものも持ち合わせている。
ちょっとしたギャンブル要素だ。
実際にソシャゲのガチャ配信など、ゲーム配信者のコンテンツの一つとなっている場合も多い。
だからこそ消費者サイドも散々文句を言いつつ辞められないのである。

つまり、ランダム商法全てを否定するのも違う。
実際たまたま出た推しでも何でもないキャラに意外とハマってしまった…みたいな偶然の出会いもあるだろう。
では必要なのは何か?救済案だ。

例えば全5種の5人のキャラクターグッズがあるとする。
これを3種類の形態で売ればいいのではないか?

  • ランダム商法→全ては運による。想定より安く目当てのものが手に入る可能性もあるし、逆に定価より高くなる可能性もある。良くも悪くもギャンブル要素。
  • コンプリートセット→定価より少し割高になるが、確実にコンプリート出来る。
  • 単品売り→コンプリートセットより更に割高になるが、確実に目当てのものが手に入る。

この3種の販売形態を必ず用意することで、既存のガチャを楽しみたい層、コンプ欲が強い層、何が何でも推しを求める層と、全てのニーズに応える事が出来るのではないだろうか。
企業は金を毟り取るのではなく喜んで金を使わせる事に頭を使え。

ガチャ1択よりはよっぽど健全である。
コンプセットや単品売りが割高な事に文句の声も多少出るかもしれないが「この売り方は良心的!一生ついて行きます!」と絶賛する声もたくさん出るのではないだろうか?
というか販売サイドが大事にするべきなのは後者の客なのでは?とすら思う。

ランダム商法はかなりの利益が出るとは言うが、それは単に今後10年分の信用を切り売りしてるだけとも言えるのではないだろうか。

その間に疲弊して離れるユーザーもたくさんいるはずだ。
実際、推し活疲れなんて言葉もよく目にするようになった。

金銭的に厳しくなってついていけなくなる、あるいはついていこうと必死になって生活費を切り詰める
または仕事を詰め込んで無理をした結果、心身を病み娯楽どころではなくなる。
そんな話もそこら中に転がっていそうである。

では、そうしたついていけない消費者は振り落として進んでいくのか?
振り落とした分は新たに新規顧客を獲得する?
これじゃ消費者じゃなくて被消費者じゃないか。
消費者を消費してどうするんだ

どう考えても既存ファンを繋ぎ止めて長くグッズを買ってもらった方がコスパが良い。
つまりマーケティング視点から見てもランダム商法は「信用の切り売り」をしている短絡的な手法と言えるかもしれない。
今後の利益を前借りしているだけだ。

さらに「ランダム商法ですか?じゃあ買いません」と黙ってNOを突きつける人たちの事が全く見えていない。
数字には出づらいが、こういう層だって一定数存在するはずである。
つまり、企業は知らず知らずのうちに本来得るはずの利益を投げ捨てている可能性すらある。

そもそも「好きな物に金を使ってるはずなのに幸せにならない、満たされない」というのはかなり不健全だと思う。
「金を貰って対価を与える」という商売の基本中の基本すら成っていないように思う。

企業サイドは一度顧客アンケートでも取ってみたらいいのではないだろうか。

ここから転売の話にも繋げてみよう。
転売は組織的なものだけではなく、個人転売ヤーもたくさん存在するはずだ。

さて、現状ランダム商法で推しを確実にゲットするためには、ロット買いという方法が取られる。
つまり欲しい物1点のためにたいして欲しくない物も併せてセット買いしているという事になる。

では、手元に残ったたいして欲しくなかった物はどうするか?
メルカリ行きである。

また例え話。
いらない物をメルカリに定価で出そうとしたら、他の出品者達はかなり値段を吊り上げて販売していた
しかも売れている。
そういう時にどういった心理になるか?

「ロット買いで財布事情厳しいし回収しないとな…」
「自分も相場にあわせて高めの価格設定で出そう」
「みんなやってるしいいよね」
「こんな汚い売り方する公式が悪いんだから」

こういった心理状態になる人もいるのではないのだろうか?
まさに「正直者が馬鹿を見る」状態である。

これで晴れて個人転売ヤーが爆誕するわけだ。
そして転売によるうまみを知る。
真面目に働くのがバカらしくなるかもしれない。
ランダム商法が転売行為を増長させている可能性、である。

一度転売行為に手を染めた人は転売へのハードルが低くなっているはずである。
別の機会に限定グッズが販売された際、自分用に1個、転売用にもう何個か確保してちょっと儲けるか〜という発想になるのも、想像に難くない。

するとどうなるか?
転売目的の過剰購入で品薄になり、本当に欲しい人に行き渡らなくなる。
そして我慢出来ない人はメルカリなどの転売品に手を出してしまう、という事態になるわけだ。

本当に欲しいなら定価の2倍以上の値段でも買ってしまう人はいるだろう。
悪循環の始まり始まり。
一番得をするのが転売ヤーという、歪な構図の出来上がりである。

転売ヤーは実際悪人であり「転売ヤー死すべし」と糾弾するのは簡単だが、悪人が悪人になる心理を考慮しなければ事態の根本的解決にはならないだろう。

中にはこれで転売に味を占め、キャラクターグッズに限らず生活用品に手を広げる人だっているかもしれない。
実際にコロナ禍はマスクの転売、最近だとコメの転売で社会問題になった。
つまりランダム商法は界隈だけの問題でなく、社会問題に発展している可能性もあるわけである。
因果関係。

悪質な商法が消費者の悪質な行動を誘発させている可能性である。
例え話はすべて私の妄想ではあるが、めちゃくちゃ突破な例えを出しているわけでなく「あるある」の範疇だと思う。

ではなぜランダム商法はいまだに根強いのか?

  • 消費者→「文句の声」自体は上がっているものの、消費者自身の自己管理の問題として扱われる、「嫌なら買わなければいいじゃん」で収められてしまっている
    文句の声も感情的なものが多く、クレームや「お気持ち」として片付けられてしまっている
  • 販売側→利益ドバドバでうますぎてやめられないし問題にする必要もない
  • 外部の人間(マーケター)→「数字が出せているので大正義」
  • その他→「まあ自分には関係ないし

こういった構造で問題が表面化しないのではないか?と思っている。
歪んでますな。
これじゃ消費者庁も動くに動けないだろう。

この過度な「推し活」文化などに疑問の声を上げている文章は見かけたが、「節度を持ってね」など、やはり個人の意識の話に終始していたような気がした。

こういった地獄のような状況で我々に出来る事は何だろうか。

「ランダム商法を買うな!買わない事で消費者の意志を示すんだ!不買運動だ!」と言うのは簡単だが、実際こういった商法に不満を持ちつつも推しのグッズは買わずにはいられないのが人間心理だろう。
推しが人質に取られている」とはよく言ったものである。

そして売れる事により販売サイドも「この商法は売れる!利益が出る!」とどんどんランダム商法に傾倒していく。
このままでは悪循環は止まらない

やはり声を上げる事が大事なのではないだろうか。
だが別に私は扇動したいわけではない。
怒りのままに「ランダム商法をやめろ!」「ランダム商法はクソ!」と声高らかに叫んだところで届かないだろう。
先ほども言った通り、やばいクレーマー扱いされるのがオチだ。

怒りの叫びではなく「ランダムだけではなくちゃんと欲しい物を安心して買わせてほしい」という切実な声を、伝わりやすいように届けるのが大事なのではないだろうか?

それこそ冒頭の私の問い合わせ内容のように、冷静にフィードバックを送るだけでも変わるのではないだろうか。
1人が声を上げたところで意味は無いが、多数の声なら何か変わる可能性がある。
1人が動かなければ多数にはならない。
それはここ数年のSNSが良くも悪くも証明してきた。

貴重なご意見」が多数届く事により、売上の数字は出ているが実は不満を抱いているユーザーが多いという証拠にもなりうるのである。

このように、買った商品7個全てが被った体験談からランダム商法の考察→果ては転売の話まで広がってしまった。

ちなみに語ろうと思えば、ウエハースチョコや某ファーストフードチェーンのフードロス問題や「娯楽で満たされない」から匿名で憂さ晴らし→過度な炎上叩きへの加担ソシャゲ依存、ガチャ運によるユーザー格差からの友情クラッシュ、ゲーセンのクレーンゲームについての因果関係まで語れる。

が、キリが無いので今日はここまでにしておこう。

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