ぬいぐるみの事例で見る、パクリの定義のおはなし

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ふとSNSを見ていたら「ティーニーフレンズ」というぬいぐるみについてなんか話題になっていた。

【新ブランド】あの有名店のお菓子がぬいぐるみに!? ティーニー フレンズのコラボアイテムがかわいい!

このPR記事に対して「イギリスの老舗ぬいぐるみブランドのJellycatと似ている、パクリなのではないか」みたいな話が持ち上がっていたのである。

Jellycat

普段こういう炎上ネタみたいなのはなるべく見ないようにしているのだが、こちらも一応ぬいぐるみ好きかつクリエイターの端くれなので言っておきたい。


確かにティーニーフレンズとJellycatは、食べ物モチーフで黒いつぶらな瞳にっこりした口という共通項はある。
ティーニーフレンズの第1弾は既存の洋菓子店、和菓子店とのコラボとの事。
これが仮に野菜シリーズでJellycatが既に出している野菜ぬいぐるみと瓜二つだったらたしかに騒ぐべきかもしれない。
あとJellycatの出しているものと瓜二つのドーナツぬいぐるみとかね。

でも、この菓子店コラボの時点でティーニーフレンズのコンセプトが独自だという事が分かる。
そして共通項は黒いつぶらな瞳、にっこりした口、食べ物モチーフという点だけである。

ぶっちゃけ、これらの要素は普遍的なものだ

瞳が特徴的な刺繍とかならまだしも、言ってしまえば黒いつぶらな瞳でにっこり口の食べ物キャラクターというのは「かわいい食べ物キャラクターの共通の文法」である。
動物キャラクター然り。
最近カプセルトイで人気の「にっこりーノ」シリーズや、内藤デザイン研究所さんから出ている「ぽちゃまるシリーズ」の食べ物系だってそうだ。

それこそ個人クリエイターの作品に目を向ければ、似たような感じの食べ物ぬいぐるみはたくさん存在している。
Jellycat独自の意匠ではなく、普遍的なものなのだ

パクリの定義

では、どこからがパクリなのか?

例えば型紙の流用
誰がどう見ても元々出ている製品のコピーだと言えるもの
この場合は、もとの権利者の権利を侵害した行為であると言える。
ここまでやって初めて「これってパクリじゃない?」となる。

ただ一部の要素が似ているだけでは、パクリとは言い難い
しかも普遍的な要素。
つまり、今回のティーニーフレンズもパクリではない事になる。

そもそもこれがパクリと認められたら

クリエイターの大半が廃業になります。完。

そもそもJellycatの魅力は「黒いつぶらな瞳、にっこり口、食べ物などの普遍的なモチーフ」という素朴な作風だ。
(食べ物だけじゃなくて動物ぬいぐるみなどもたくさんある)
普通だからこその良さがあって、長らく親しまれている。

で、仮にこの普通の要素を「Jellycatしか認められない」となると、それはただの独占になってしまう。

ちなみにJellycatの魅力は他にも、上質な布地のめちゃくちゃ気持ちいい触り心地、長く続いてきたブランドとしての価値など色々ある。
つまり、多少類似のものが出たところでJellycat自体の魅力が揺らぐことはない。

仮にティーニーフレンズが似ているからという理由だけでJellycatのパクリということになると、世の中のテディベアは全てシュタイフのパクリという事になってしまう。
確かにテディベアは元々シュタイフが生み出したものだが、いまやクマのぬいぐるみの普遍的なアイコンである。

世の中のあらゆるテディベアを見て「これはシュタイフのパクリだ!」と騒ぐ人など、まずいないだろう。


ぬいぐるみに限らず、クリエイター業界にはまず作風を生み出す先駆者がいて、大半のクリエイターは作風に感化されて要素を取り入れつつ、そこから自分のオリジナルを模索していくという感じだ。
これを何でもかんでも「パクリ認定」するのは、純粋に業界が衰退するし、新しい製品も生まれにくくなるだけだと思う。

その先にあるのは文化の停滞だ。

似てると思うのとパクリは違う

実際、確かにJellycatとティーニーフレンズは似ている
「あぁ、Jellycat系だな」とは私も思った。

しかし似ているのとパクリとは違う
パクリの定義は先ほど述べたとおり、あからさまに型紙を流用したり、明確なコピー品にかけられるべき言葉だ。
今回の事例とは当てはまらない、というのが私の見解である。

「Jellycatの後追いは気に入らない」
「このタイプのぬいぐるみはJellycat以外認めない」
と思うのは個人の自由だし、だから買わないという選択肢を取るのもまた自由だ。

でも「自分が気に入らないから炎上させる」というのはただの営業妨害である。
「権利関係大丈夫なのか?」と騒ぐのも、過剰反応すぎて関連企業からしたらいい迷惑だなとも思う。

実はガチで型紙パクってたとか、本当に問題があるなら企業同士で然るべきやり取りが行われるわけで…。
外野が騒ぐ事じゃないよな
と、ぼんやり思ったのであった。

きっと怒ってる人はJellycat愛ゆえなのかもしれないが、その愛は過剰防衛になっている可能性が高い。
本当に気になる部分があるならJellycat公式にひそかに問い合わせして、その動きを見守るだけでファンとしては十分なのではないだろうか。
問題があったら何かしらアクションがあるだろうし、問題なければ何も起こらないはずである。

本当のパクリは許される事ではないが、パクリの定義そのものを履き違えないでほしい
じゃないと新しい物が何一つ生まれなくなってしまう。
正義を振りかざしたつもりが、文化の停滞どころか妨害に繋がる可能性だってあるわけだ。


これも一個人の意見に過ぎないが、騒いでいる人の影になりつつ「これかわいいけどパクリなのかな…買わない方がいいのかな」と心配になった人や「いやパクリじゃないと思うんだけどな…」と思いつつ黙っている人もおそらくたくさんいるであろう。
この文章がそういう人たちの参考になればなと思う。

ちなみにティーニーフレンズに関しては、色合いが優しくてかわいいなと思った。

追記

Jellycatとティーニーフレンズのカヌレの比較画像をSNSに上げている人がいた。
確かに色も形も似ていて、ぱっと見同じに見えなくはない。
が、よく見ると縫製が全く違う
Jellycatは顔の中心に少しダーツっぽい縫製が入るのに対し、ティーニーフレンズの方は顔の中央は避けて縫製している。
あとパーツの分け方が明確に違う。

Jellycatのカヌレはカヌレ独特の個性的な形や立体感を強調した構造、ティーニーフレンズは平板でソフトな構造に見える。
ちなみに食べ物キャラクターに足がつくのはよくある一般的な手法とも言える。

つまり型紙のパターンをパクったわけではなく、この比較画像だけではパクリだと断定するのは不可能だと思った。
似てるけどパクリとは言えない。
そもそも商品画像のスクリーンショットを撮影してSNSにアップするのは、それこそ無断転載だと思う。

というか本当に気になるならJellycat公式に報告だけして黙って待っていればいいのではないだろうか(2回目)。

ちなみに我が家にはJellycatのぬいぐるみは2体だけいる。