凡シュール

チンアナゴの日

凡シュールのエッセイ

11月11日は何の日?と聞かれたら、私は迷いなく「チンアナゴの日だ」と答える。
チンアナゴが好きだからだ。

つまり今日はチンアナゴの日だ。
1という数字の形がチンアナゴっぽくて、それが11.11と並ぶからチンアナゴの日。
私は既に1という数字がチンアナゴに見える病にかかっている。
「アルファベットのJを反転させたらチンアナゴになる!」なんて言っている時点で重症だろう。

私がチンアナゴを好きになったきっかけは…
もう10年くらい前、すみだ水族館だ。
大きな水槽で揺らめく何匹ものチンアナゴ達。
その異様な光景に心奪われた。

チンアナゴの名前の由来は、目が大きくて犬種の狆(ちん)に似ているからという由来だ。
狆あなごというわけである。

ニシキアナゴはよくチンアナゴとセットで出てくるが、実は種類が少し違う。
ただのカラーリング違いというわけでもなく種類から結構違うのだが、同じ水槽で暮らしているし細かい事はそんなに気にしなくて良いのだろう。
ただ、チンアナゴ好きの前でニシキアナゴを見て「チンアナゴだ!」と言うと少々めんどくさい事になる。ご留意願いたい。

彼らの魅力は、なんか地面からにょきっと生えてゆらゆらしているところである。
すみだ水族館京都水族館で見るのをオススメしたい。
大きな水槽にたくさんいるからである。
たくさんのチンアナゴ/ニシキアナゴがゆらゆらしている様は圧巻だ。というか奇妙だ。

大水槽のチンアナゴ達を見ていると、時折喧嘩が勃発している。
喧嘩といっても物騒なものではなく、ちょっと威嚇し合う極めて平和なものだ。
大抵弱い方が砂の中に引っ込んでいく。
その様子も面白い。

時間が経つと、引っ込んだ方が「そろそろ大丈夫かな…」と、おそるおそる出てくる。
が、先ほど喧嘩した奴と目が合うと「やべっ」と引っ込んでいく。
妙に人間味のある生物だ。

たまに2体が絡まっていたりする。
ちょっとしたオブジェのようになっているが、飼育員さん曰く「彼らはあまり気にしていない」らしい。
つくづく変な生物である。

周りに誰もいないところにぽつんと佇んでいる個体もいる。
「俺は長いものには巻かれねえぜ」と言わんばかりの我が道を行くスタイルだ。
孤独を謳歌している変わった奴である。まるで私のようだ。

チンアナゴ達はもともと細長いが、砂の上に出ているのは体のごく一部である。
大半は砂の中に埋まっている。つまり実体はもっと長い。

以前京都水族館に行った時、たまたま砂から出て泳いでいる個体を見た事がある。
運が良いと、この「引越し」を見る事が出来る。
かなりレアなので、見れたら相当運がいい。

ヘビなみのニョロニョロボディだった。
泳ぐといってもほぼ一瞬である。
すぐに新しい穴を見つけ、しゅるしゅるしゅるっと埋まっていく。

エサの時間は、これまた面白い。
チンアナゴ達はプランクトンを食べる。
飼育員さんがプランクトンを大量に投下し、水槽の水流に流されながら彼らの口元に届いていく。

ゆらゆらしながら口を開けて待ち構え、流れてくるエサをぱくぱく食べて行く。
これだけでずっと眺めていられる。

たまにどさくさに紛れて脱糞している奴もいる。
チンアナゴの肛門は人間でいうへそに近い位置にある。
脱糞時は、そこからぶわあっとうんこが放出される。

うんこといっても彼らはプランクトンしか食べないので、そこまで汚い感じではない。
というか見た目はエサとほぼ変わらない。

だからエサとうんこが同じ水流に乗って流れていく。
冷静に書き出してみるとめちゃくちゃなのだが、彼らはとにかく細かい事は気にしないのだろう。
たまに間違えてうんこに食らいつき「間違えたわ」とすぐに吐き出している個体もいる。
それも再び水流で流れていく。

チンアナゴを眺めているとよく「あ、これチンアナゴだよ!うわー…きもっ」と言う声を聞く事になる。
正直ショック…でもない。実際きもい
だが「このきもさがいいんだよ」と気持ち悪く語りたくなる…いや、やめておこう。

チンアナゴ好きが昂じて、チンアナゴモチーフのあみぐるみを作ったりもしている。
いわゆる推し活というやつなのかもしれない。
せっかくのチンアナゴの日という記念日なので、お祝いポストと称してあみぐるみ写真を流すのが通例かもしれない。

写真のストックも無いしめんどくさいので何も流していない。
つくづく世間の波に乗り切れない自分である。
推し活失敗
まあ変わらずマイペースにあみぐるみを編み続けていくのだろう。

チンアナゴだけで1600字分も語ってしまった。
それだけ魅力的で語りたくなる生物という事だ。

すみだ水族館京都水族館で見るのがオススメではあるが、他の水族館でも少数ながら生息していたりする。
ぜひ水族館で彼らの奇妙な魅力を堪能してみてほしい。

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