画面にはNotion。
カチカチ…。
コレクションDBの項目にひたすら住所を割り当てていく作業。
住所となっているケースのリストを作り、リレーションで繋げていく。
つまりどういうことかというと、コレクションケースリストを見て「フィギュア30番ケースはクローゼット内にあるな」と確認して「そのケースの中にはポケモンのフィギュアがまとめてあるな」という事が一目で確認出来る仕組みを作っていた。
カチカチ…。
地味だ。
これが出来たらかなり便利なのは分かっている。
「ピカチュウのフィギュアはどこだっけ?」と思った時に、いちいちたくさんのケースを開けて探し回る必要が無い。
店舗の在庫システムと似たような仕組みを作っていたわけである。
必要な作業なのは分かっている。
が、数が多い。
終わらない。
カチカチ…。
何時間経っても終わらない作業に、私の精神は限界に達しつつあった。
ふと思う。
「歌ってなきゃやってらんねえな」
開いたのは「平成の懐メロ」プレイリストである。
昔から慣れ親しんだ曲をシャッフルで流し、適当に口ずさみ、ひたすら虚無作業を進める。
歌うのは好きだ。これは昔から。
とはいえ、思いっきり歌える場所は限られていた。
そういう意味で昔はよくカラオケに行っていたが、別にカラオケそのものが好きというわけではなかった。
音源も安っぽいし。
ただ、歌うのは何よりも好きだったし、思いっきり歌える場所はカラオケしか無かった。
だから昔はよく行っていた。
どのくらい歌うのが好きかというと、徹夜のカラオケで朝方に友達が全員くたばっても1人で何時間も歌い続けていたくらいには好きである。
カラオケの採点機能は嫌いだった。
せっかく人が気持ち良く歌ってるのに、何でわざわざ点数をつけられないといけないのだろう。
気まぐれに導入してみる事もあったが、採点の基準もよく分からないなと思った。
結局は「キーが合っているか」しか見ていない。
歌の感情の込め方や音の揺れはノイズ判定される。その仕様が気に食わなかった。
あすけんを好きでない理由とおそらく同じ理由であまり好きでない。
実際にカラオケで全国ランキングが高い人の歌が聴ける機能みたいなのがあった気がするが、それを聞いてみても「キーが合ってて歌が上手い」以外の感想は無いなと思った。
プロとの決定的な違いは、やはり歌に感情が乗っているか否かだろう。
他人の心を震わせられるかどうか、である。
歌唱力が幾分か劣っていても、この感情の込め方で心を揺さぶってくるアーティストはたくさんいる。
私はこの「感情を乗せて音を出す」という行為を心から楽しんでいた。
身体全体が音で満ちる瞬間。
特段歌詞に共感した曲でなくても(ラブソングなんかは特にそうだが)、この感情を乗せる行為を楽しんでいたし、歌詞の人物になりきる演技を楽しんでた節もあるかもしれない。
そういう意味では、もしかしたら演者の素養もあったのかもな。
人前で、というよりはライブ会場などの思いっきり歌える場所で活躍するアーティストを見て憧れは持っていたが、自分が歌手になろうとはしなかった。
おそらく歌を「商売道具」にしたくなかったのだろう。
「歌い手文化」と相容れる感じでもなかった。
歌っている瞬間の「自分ではない、何者でもない何か」になる感覚が好きなのだろう。
だからこそ私は今でも歌うのが好きだし、何時間でも平気で歌っていられる。
すっかりまとまりのない文章になってしまった。
とりあえず、そんな風に歌って気晴らししながら作業していたら何とか目標の部分まで終わった。
この作業もあと少しだ。
