凡シュール

焼肉の町、飯田に行ってきた

凡シュールのエッセイ

昨日もちらっと書いたとおり、長野県飯田市まで行ってきた。

この経緯がそもそも意味不明なので、そこからお話する。
そもそも「飯田に行こう」となったきっかけは、夫である。

◎きっかけは「焼肉の町スタンプラリー」

来年2月に北海道の北見(網走のちょい下である)で開催されるらしい極寒BBQに参加する夫。
そのBBQのチャットルームに流れてきた、とあるスタンプラリー。

焼肉の町スタンプラリー
北海道北見、長野県飯田、沖縄県石垣の3ヶ所を巡り、対象の焼肉を食べるとスタンプを押してもらう。
1ヶ所、2ヶ所、3ヶ所で貰える景品が違うわけだが…
3ヶ所全部押した猛者に贈られるのは、金のトングである。

その金のトングを目指して各地を巡る事を決意した我が夫。
北見はもともと行く予定なので、飯田石垣の2ヶ所に行けばコンプリートだ。
記念すべき1ヶ所目として飯田に行ってきたわけである。

……ツッコミ出すとキリが無い。
読者の皆様も疑問符とツッコミが止まらなかった事だろう。
そんな読者に配慮して一つずつツッコミを入れていこうと思う。

◎極寒BBQって何やねん

まずは2月に北見で開催される極寒BBQ
この時点で「?」である。

https://hokkaido-labo.com/area/doutou/kitami-yakiniku-festival

少し前に「誘われたからこのイベントに行ってくる」と言われた私もまさに「は?」であった。
ちなみに真冬の北見がどれくらい極寒かというと、マイナス10℃の世界らしい。死ぬやろ。

と、酔狂としか言いようがないイベントなのだが、もう20年くらい行われている由緒正しき(?)イベントらしい。
頭のおかしい夫にお似合いのイベントだ。
ちなみに私はもちろん留守番なのだが、北見行きの日は私の誕生日である。

妻の誕生日に妻を差し置いて酔狂なイベントに参加する夫の図。
かなり常識はずれだと言えるかもしれないが、私は私で今更夫に祝われたところで「どうでもいい」というのが本音である。

人生の軸を夫婦や家族に置いていないため、私は私で勝手に楽しむ。
これが夫婦生活の秘訣だ。
恋愛感情が重視されるのはせいぜい新婚までだろう(新婚時からイチャラブ的なのとは無縁だったが。当然結婚式もしていない)

それはそうと常識はずれである事には変わらないので「酷い夫だねぇ、ほんと」とたまに適当にいじっている。

◎焼肉の町スタンプラリーって何やねん

話が逸れてしまった。
次に「焼肉の町スタンプラリー」である。
イカれたBBQイベントが開催される北見は焼肉で有名らしい。
石垣も昔行った時に石垣牛の焼肉を食べた記憶がある。わかる。

飯田。まず「どこだ?」となった。
地図を見ると長野県の南側
南の山間部に位置する町だった。

で、3ヶ所巡ると貰える景品の「金のトング
それを聞いた瞬間、私は「え、めっちゃいいじゃん」となる。
だって金のアイテムだぞ?
どうぶつの森で金のアイテムといえば勲章レベルではないか。

と冗談混じりに「欲しい」と言ったところ、夫は心なしかやる気満々である。
本当にやるのか?
北見はもとから行くからいいとして、飯田と石垣島に本当に行くのか?

元々10月29日は夫が珍しく有休取れるから「宮ヶ瀬湖あたりにドライブしようぜ」みたいな話だったのだが、目的地が宮ヶ瀬→飯田になった。
だいぶ距離が伸びている気がするが、運転手である夫がやる気なのでまあいいのだろう。

◎いざ、飯田へ

そういうわけで飯田に向かったわけである。
早朝6時からレンタカーを走らせ、飯田に向かう。

遠い。片道250kmほどだ。
中央自動車道で甲府や諏訪を通ってから南に下る。
ひたすら山、山、山。
山を眺めるのが好きな私からしたら楽しい道中ではあったが。

楽しすぎて歌っていた。
「や~~~まだ~~ぜ~~~~やまだ~~~~~ぜ~~~~マウン…テン」
変な歌である。作詞作曲俺。

途中、談合坂SAに寄って簡単な朝飯を食べる。
ポテもろこしというスナック菓子がやたらうまそうなので買った。実際うまかった。
じゃがビーとカールを足して2で割ったような味わいである。
ドライブのお供にちょうどいい。ボリボリ。

人生で記憶がある限り長野県を訪れるのは初めてだなと思っていたが、よくよく考えたら学校の自然教室で八ヶ岳の麓には行った事あるんだった。
川崎市で育った人間にはお馴染みのイベントである。

そんな八ヶ岳も通り過ぎ、南アルプスの山峰を眺め…
いい景色だ。山、好きだ。
とはいえ登山に惹かれているわけでもない。

体力が無いのもある。
山の景色ではなく、大抵はひたすら自分の足元を見つめる事になる。あと下山が辛い。
山は遠くから眺めるくらいが、私にとってはちょうどいい気がしなくもない。

駒ケ岳SAにも寄った。
アップルパイなどのお菓子のお土産が大量にあった。さすが信州。りんご推し。
林林檎なるアップルパイ的なお菓子を買って食べた。うまい。

◎飯田到着

のんびり4〜5時間かけて飯田に辿り着いた。
まずは観光案内所へ。
例のスタンプラリーの台紙を購入するためである。

スタンプラリーの台紙は3000円もするのだが、これにはオリジナルTシャツがついてくるためである。
Tシャツを受け取った夫は「これは北見に着ていかなければな」とご満悦の様子である。

わし「いや防寒着着てるんだから披露する機会なくね?」
夫「前を開けてアピールするしか…」
わし「死ぬだろ」

受付の人にはもちろん「…行かれるんですか?」と驚かれた。それはそう。
「頑張ってください」とあたたかく応援される。

◎いざ、焼肉

さて焼肉
ランチの時間帯なのだが、あいにく夜から営業の店ばかりだ。
どこか昼営業の店はないかと探してみると「焼肉 食べてみ」というお店が昼営業しているようだ。

入ってみると、店内はどこか高級感の漂う感じである。
どうやら飯田初の「ヘルシーロースター」採用店舗らしい。

焼肉と言えば煙モクモクの炭火焼き!という感じだが、ヘルシーロースターは煙が出ないのが特徴。
なんかいい感じの技術が詰まった機器らしい。
煙が出ないという事は、当然服にニオイもつかない
焼き上がりも普通に焼くよりはヘルシーに仕上がる…というか肉本来の旨みが味わえる、という感じらしい。

最近だと星野リゾートなどの高級ホテルも採用していたりするらしい。
お店のおばちゃんが親切に色々教えてくれた。

そんな感じで肉を食らう。
うまい。これはいい肉である。

煙モクモク脂ガツガツ!を求める人には少々物足りないかもしれない。
どちらかと言うと「良いお肉をおいしく頂く」という雰囲気だ。
それにしてもうまい。

盛り合わせ的なのを頼んだのだが、カルビすらどことなく上品な味わいだ。
他にはタンやラム。ラムも独特の臭みが少なく食べやすかった。

あと黒モツも初めて食べた。
飯田ではスタンダードらしい。
黒いブツブツで見た目が少々グロテスクなのだが、コリコリとした食感でおいしい。
ビールに合いそうである。

さて、このお店。
ジビエも取り扱っている。
飯田焼肉とは関係ないのだが、ジビエにもかなりのこだわりを持っている店のようである。

「あれ、アナグマあるじゃん」
夫によると、アナグマは絶品だと聞いた事があるとの事。
しかもかなりレア。
狩猟免許が無ければ食べられないので、出せる店はかなり限られているらしい。

そんなわけで注文。食べる。
確かにめちゃくちゃうまい。
ジビエ独特のクセもかなり少なく、あっさりとジューシーが同居している。
これは食べる価値ありの逸品だ。

アナグマも「ビールに合いそう」だと思った。
私の食レポは「うまい」か「ビールに合いそう」しか無いのか。

そんな感じで焼肉を堪能した。
アナグマも食べれたし良かった。
当然スタンプラリーのスタンプを押してもらったわけだが、その際におばちゃんに驚かれ、あたたかく応援される。
スタンプラリーで来てくれた人は初めてですよ〜!」それはそう。

◎飯田市美術博物館へ

腹も満たされたが焼肉だけ食べて帰るのも何なので、飯田市美術博物館へ行く。
当然知的な私の案である。
観覧料は特別展込みで500円。駐車場は無料。

まず美術館を見る。
飯田出身の菱田春草の作品を中心に展示されていた。
近代日本画の人だ。
名前だけふんわりと知っている程度だったのだが、かなり繊細な画風だなと思った。

それから特別展「山と生きる
飯田をはじめとした遠山地域の事が少し分かった。
この地域で採れる良質な木材が重宝されて、京都の東本願寺や江戸城などの城にも供給していたらしい。

知らないを知るのは面白い。
同じ日本でも全く別世界のように見えてくる。
実際、住む地域でその生活スタイルは全く異なるだろう。広きを知るのは面白い。

博物館の方も見たが、民俗学者の柳田國男に関する展示が結構あった。
結構縁が深かったらしい。
そもそも養子に出された柳田家が、旧飯田藩の藩士だったようだ。

あと飯田出身の田中芳男の存在も気になった。
上野動物園の創設に携わったり、上野の国立博物館などの創設者でもある超すごい人である。
他にも色々な研究に貢献したり、昆虫採集したり、とにかく手広く色々やっていた人らしい。

ものすごく知的好奇心と探究心が強かった人なんだろうなと思う。

雷鳥の剥製も展示されていた。
長野県といえば雷鳥である。
ぽってりしててかわいいし、最近人気のシマエナガ並のポテンシャルはあると思う。

まあこんな感じで、色々飯田について知る事が出来て良かった。
理解が深まるという事はそれだけ縁を結ぶ事にも繋がる気がする。
ただ焼肉を食べて帰っただけでは、飯田についてここまで思いを馳せる事は無かっただろう。

行く前の「飯田ってどこ?」からだいぶ進歩している。
知識とはこうやって蓄えていくものだ。

◎焼肉の町だなぁと

焼肉の話に戻るが、調べてみたところ飯田が焼肉の町というのは、観光向けPR事業でも何でもなくガチである。

実際飯田を巡って見かけたコンビニの数は2軒、焼肉店の数は5〜6軒。
コンビニより焼肉店の方が多い。どういう事なんだ…。
「人口1万人に対する焼肉店の数で全国1位の町」という謎すぎる実績を持つ飯田。

夫「コンビニより焼肉の方が需要あるんじゃね?」
わし「んなこたないだろ」

とはいえ、実際に地域のイベントには焼肉が不可欠らしい。
調べてみると自宅でも焼肉をしている住民も多く、焼肉のタレも家庭ごとにオリジナルたれがあるとかなんとか。

昭和初期、ダムや発電所の建設でやってきた朝鮮人の労働者が「肉をタレにつけて焼く」のを広めたのが始まりらしい。
「飯田焼肉」は歴史ある食文化というわけだ。

◎5時間かけて帰還

満足して帰路に着こうとしたのだが、中央自動車道小仏トンネルでの事故渋滞により、実際帰宅したのは21時過ぎである。
その結果が疲労感にまみれた昨日のエッセイだ。

改めて北見石垣飯田を比較してみると…
女満別空港から車で40分ほどで辿り着く北見、羽田or成田から飛行機で4時間ほどで辿り着く石垣、車で4時間以上の飯田
東京目線で考えると、飯田が一番行くの大変かもなと思った。
一番楽なのは石垣島である。

飛行機って便利だな…。
何にせよ夫には金のトングを目指して頑張っていただきたい。

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